こんにちは!
Vocal Studio 802 代表 Yukinoです。
声心体一致のボイストレーニングを行っています。
今日は、先日のレッスンでの興味深い出来事をシェアしたいと思います。
3ヶ月基礎発声徹底コースで、3ヶ月目に入った受講生Sさん。
Sさんは、うつ病と慢性的なみぞおちの違和感があるとのことでしたが、最初の2ヶ月で、ベルティングボイスとミックスボイスを習得し、かなりクオリティの高い歌を歌うことができるようになりました。
「気持ち良く声が出せるようになってから、楽しいし心が軽くなってきた」とも話してくれました。
ところが3ヶ月目に入ったある日、Sさんがこんなことを言ったのです。
「誰かに向かって話す時や、明るい曲を頑張って歌おうとする時に、特にみぞおちに違和感を感じる」
緊張したり無理をすると、みぞおちや胃の辺りが痛くなる経験は誰でもあると思いますが、小さな無理を身体が敏感にキャッチしてるのかもしれないと考え、
じゃあどんな声なら大丈夫?と聞いたところ、
「こんな感じですかね」と、
声にならないくらいの息っぽい、低い声で語り出しました。
おお、暗いね!笑
じゃあそのままの声で歌ってみようか!
と言うことで取り急ぎ、レッスン課題曲、アラジンの「A Whole New World」。空飛ぶ絨毯でキラキラの夜空を飛び回る映像が見えてくるような、明るくてワクワクするような曲なんですが、、歌詞の内容は一切無視して、歌ってもらいました。
「A Whole New World〜…」
これは…
彼女の声から、信じられないほどの悲しみが聴こえてくる。
一体何があったの!?というくらい悲しい声。
でも、
「すごく楽です」
とのこと。
音域的に出しにくい箇所が少しあったので少し調整したら、
みぞおちの違和感もないままスルスルと声が出ました。
美しくも、とにかく悲しい声に、
ゾクゾクして、涙が出そうになりました。
この時に強く思ったんです。
今のSさんの本当の声はこれなんだなと。
これで良いんだなと。
今まで抱えてきたこと、うつ病を患ったことなど話してくれてはいましたが、正直、彼女の話を聞く以上に、それまでの苦労や悲しみが、声から伝わってきました。
何もしない、取り繕わない、誰の評価もない、ただその人自身が声になった状態。これこそが本当の声であり、人の心を震わせるものなんだと思いました。
その瞬間に存在する、ありのままの自分を声にする。
誰かに観られるシンガーである以上、無意識に良く見せようとしたり、着飾ったりしてしまうもの。演技が必要な時もたくさんある。だからこそ、「何もしない」「素の自分」でいることは難しいし、どこにそれがあるのかすら気づけなかったりする。
本当の声に出会うことも、それを自分自身で許可して、表に出すことも、簡単ではないけれど、その美しさは何にも変え難いものです。
悲しい声でも、ハイテンションな声でも、力強くても、囁き声でも、音程が取れてなくても、消え入りそうな声だとしても、
本当の心=本当の声は、聴く人の心にダイレクトに届きます。
自分の本当の声を見つけたら、愛して、大切にしてほしいなと思います。