皆さんこんにちは!
Vocal Studio 802 代表講師の井田幸乃です。
前回の記事でも少し触れましたが、「量産された声」になっていくのは寂しいことだと、私は思っています。
先日、夫の運転する車に乗っていて、ロック系のJポップが流れていました。
しばらく聴いているうちに、「これって○○(バンド名)?」と聴いてみると、○○の最近出たアルバムとのことでした。
デビューした頃、特徴的なボーカルが格好良くて、思わず振り向いてしまうような、クセになってしまうような感覚を覚え、夫とライブを観に行った思い出もあるバンドさんでした。ところが、車の中で聴いた声の印象は、「ロック系のJポップシンガー」。あの人の格好いい個性的なボーカルはどこへ行ったのかと、ちょっとショックでした。
CDで聴く声は、綺麗だし上手です。
でも整ったその声は、個性を消した、まさに量産された声。
ボイトレで整えたり、レコーディングで良いテイクを録ろうとする気持ちももちろんあると思いますし、メジャーアーティストとして周りから求められるものも多く、商売ですから万人に受け入れられることも意識するでしょう。
大きなお世話と言われてしまうかもしれませんが、私の価値観を書かせてください。
発声の基礎は、発声そのものを整えることではないと思っています。
発声の基礎は、「自分自身」を知り、認めることだと考えています。
完璧じゃない今の自分。
愛や慈しみや優しさだけじゃなく、汚さ、ズルさ、弱さを持った自分。
成功ばかりじゃない、トラウマや悔しさ、挫折を含んだ過去。
上辺だけじゃない、人に言えない価値観。
全部含めた自分自身を認めることが、自分の声で歌うための基礎。
その基礎がなければ、世の中の評価によって、時代によって、自分じゃない誰かや何かによって、自分の声が変えられてしまう。批評や非難を恐れるあまり、平均値に自分を寄せていってしまう。
自分の声、自分の心、自分の価値観を表に出すことは勇気のいることです。
個性的であればあるほど、好きだという人と同じだけ嫌いだという人も増えるでしょう。歌手であれば、好みじゃないというだけで「なんであんな下手なの」などと言われて傷つくこともあるでしょうし、仲間や周りの人に「ああしろこうしろ」と言われることもあるでしょうから、自分を見失わない方が難しいかもしれません。
だからこそ、発声を整える以前に、自分の軸を持つことが大切だと思います。
揺らぐことはあるかもしれないけれど、困った時に帰ってくる場所は、自分でしかない。そこを疎かにすると、いつまで経っても、発声に苦しみ、世の中の声に苦しむことになります。
自分の声を他人に受け渡したら、自分が歌う理由がなくなるんです。
「私、なんで歌ってるんだろう」の迷路に迷い込むと、抜け出るのは容易ではありません。
私がレッスンで、発声のポジション以上に伝えたいことです。
あなたには全部備わってるし、あなたを変える必要はない。
そんな私も、人前に出て自分を表現することは怖いですけどね!
ではでは皆さん、良い1日を!